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そして、聖夜。
彼女の前にリヒャルトが立っていた。
荷物を持って暖かい正装に身を包まれてやって来た主人は、リヒャルトを見て眉をひそめた。
「今夜はルドルフのはずだが?」
「ご主人。今夜はどうか俺に彼女と組ませてください。ルドルフに負けない活躍をして見せます。」
主人は、ルドルフの姿を探した。
ルドルフは、仲間たちの後ろで悲しそうにリヒャルトを見つめていた。
「せっかくだがリヒャルト・・・・」
「私はかまいませんのよ、ご主人様。」
不意に、彼女が口を開いた。
よく響く鐘のように澄んだ声たった。
「リヒャルトは言っても聞くような殿方ではありません。私と組まない限り、己の愚かさに気づかぬでしょう。」
「ふん。俺のリードに身を任せれば、そんな口もきけなくなるさ。」
二人の会話に、主人はため息をついた。
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