それぞれの王

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「言葉にできないのなら、拳で語れ!!」 そう言うと、クレバオプ達の目の前に行き、大きな拳をクレバオプの頭へと落とした。 「ぐぇっ!!」 「クレバオプ!!」 私は慌ててクレバオプ達に駆け寄る。 「な、なにをなさるんじゃ!?」 涙目になりながらクレバオプはケイジに抗議するが、ケイジは爽やかに笑みを浮かべ、両手を広げた。 「さぁ、語り合おう!お前らはずっと獣だったのだろう!?ならば言葉よりも拳のほうが伝わるはずだ!!」 「ちょっと待ってよ!!だ、大丈夫?クレバオプ??ーーびぎゃ!!」 座るクレバオプへと屈み寄ったところで大きな拳が私の頭にも落ちてきた。 痛い。 強い衝撃に記憶が飛びそうだ。 《ドゴッ!》 頭を押さえ手で押さえていると、鈍い音が再度響く。 見上げるとケイジの頬を殴るクロウの姿があった。 「如何なる理由であれ、どのような者であれ、主に手を出す者は我が許さん」 ケイジはそれにニヤリと笑うと、唇が切れたのか僅かに滲む血を指で拭う。 「いい拳だ」 なにそれ、怖い。 「よくもナナシを!ーーぷぎゃ!!」 少し遅れてステイがケイジに殴りかかるが、あえなく返り討ちにあう。 「それ!皆も舞え!」 「イーリス名物喧嘩祭だよーー!」 ケイジとオウジュの言葉にイーリスの兵達は近くにいる者を殴りだす。 これが名物というイーリスに恐怖を覚えるが、ダインハートの者達も喧嘩祭という名の殴り合いに巻き込まれていく。 「ずっとその胸が気に入らなかったのですわ!!」 エルミアがそう言うと、アネモネへと平手打ちをしようとするが軽やかに避けられて床へと倒れこんでいた。 その姿、なんとも情けない。 「わたしの武が試される時でちゅね!」 ライラ。 違うよ、ここじゃない。 私の心の声が届くわけもなく、ライラはギラギラとした目で近くの兵に殴りかかるが頭を手で押さえられリーチが届かずジタバタとしていた。 なんなのこれ。
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