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トニ男君は去年、
おじいちゃんから千円
おばあちゃんから千円
計二千円を別々の封筒から貰いました。
それは毎年同じです。
毎年別個で貰い、金額も毎年二千円なのでした。
トニ男君は今年、どうしても欲しいゲームがありました。
そのために今年のお年玉は多めでなければなりません。
頭の回転が速いトニ男君は、去年から仕込みを入れていました。
おじいちゃんとおばあちゃんへ手書きの年賀状を書いて送っていたのです。
もちろん年賀状には
「おじいちゃん、おばあちゃん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくね。お年玉は大入りがいいな」
と、つたなくも愛着を湧かせる手書きのメッセージ付きです。
そして、おじいちゃんとおばあちゃんの家に着くとトニ男君は早々にお手伝いを始めました。
これも大入りお年玉の為です。
トニ男君は終始ニヤニヤしていました。
いくら金額が跳ね上がるだろうか。
5000か? それとも10000か?
祖母からのも合わせて20000?
ぐふふふ。
含み笑いが止まりません。
親戚一同も集まり、彼らからも集金を済ませ、
トニ男君のポッケはお年玉でいっぱい。
今年の合計金額は30000円程でしょうか。
おじいちゃんとおばあちゃんからの大入りお年玉を合わせれば、
更に……。
食事も済み、ほっと一息。
ついに、
おじいちゃんから呼び出されました。
おばあちゃんも隣に座っています。
いよいよお年玉、授与です。
おじいちゃんはニコニコ微笑み、トニ男君に言いました。
「年賀状くれたね。ありがとう。大入りお年玉だねぇふふふ。さぁ、受け取りなさい。お金は大事に使うんだよ」
手渡されたお年玉をその場で早速開けてみると二千円入っていました。
おばあちゃんからも二千円という計算で四千円。
予想を下回るも悪くない数字です。
…ですが、おばあちゃんからは何もありません。
トニ男君が指を擦り、チップをせがむフリをするとおじいちゃんがいいました。
「おじいちゃんから千円、おばあちゃんから千円、一つの封筒にいれて、二千円。大入りお年玉。ふふふふ」
…なん、だと?
去年までは別々の封筒に千円ずつ。
今年は一つの封筒に二千円。
それを大入りお年玉と呼び、おじいちゃんは手渡しました。
一枚も二枚も上手なおじいちゃんの悪知恵に舌を巻いたトニ男君。
愛想笑いで苦い涙をこらえましたとさ。
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