イチロー 2011 冬

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その日トニ男は、午後から人と会う約束をしていました。 なので午前中に散髪を済ませる事にしたのです。 トニ男ももう大人です。最近無精髭が似合うようになってきました。 なので無精髭が似合うスポーツマン、メジャーリーガーのイチロー選手のような髪型に憧れていました。 トニ男は髪をイチローカットにするつもりなのです。 行きつけの床屋に到着すると今日に限って大盛況。 店内の待ちソファーはいっぱいになっていました。 よく担当してくれるフレンドリーな店員さんも今日はてんてこまいです。 渋々座ると、野太い声がトニ男を呼びました。 「お客さん、整理券」 野太い声の持ち主は顔も厳つい。 何より、頭頂部がザビってました。 ※ザビる …頭頂部分がフランシスコ・ザビエルのように円形脱毛している事。 整理券を取り、ひたすら待つこと…数分。 キン肉マンのアシュラマンみたいな声がまたトニ男を呼びました。 「えぇー整理券9番の方、どうぞ」 (マジかよあんたかよ。ホント厳ついよ。厳つい上にザビてるから余計滑稽なんだよ。こんな恐ぇ人に迂闊にイチロー云々何て言えねぇよ) 「今日どうする?」 (どういう聞き方だよ。ノープランでデートするカップルみたいに聞いてんじゃねぇよ) 「あ、その…」 (イチローって言えねぇ…) 「あの、スポーツ刈で」 「長さは? 長め短め?」 「短めで」 (イチローも短めだったからな。うん、これで大丈夫だ) ザビエルは前掛けをトニ男に掛けると、早速散髪を始めた。 バリカンでウイイイイイイイイイイン!! (なっ!? 何ですとおおお!!)
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