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その日トニ男は、午後から人と会う約束をしていました。
なので午前中に散髪を済ませる事にしたのです。
トニ男ももう大人です。最近無精髭が似合うようになってきました。
なので無精髭が似合うスポーツマン、メジャーリーガーのイチロー選手のような髪型に憧れていました。
トニ男は髪をイチローカットにするつもりなのです。
行きつけの床屋に到着すると今日に限って大盛況。
店内の待ちソファーはいっぱいになっていました。
よく担当してくれるフレンドリーな店員さんも今日はてんてこまいです。
渋々座ると、野太い声がトニ男を呼びました。
「お客さん、整理券」
野太い声の持ち主は顔も厳つい。
何より、頭頂部がザビってました。
※ザビる
…頭頂部分がフランシスコ・ザビエルのように円形脱毛している事。
整理券を取り、ひたすら待つこと…数分。
キン肉マンのアシュラマンみたいな声がまたトニ男を呼びました。
「えぇー整理券9番の方、どうぞ」
(マジかよあんたかよ。ホント厳ついよ。厳つい上にザビてるから余計滑稽なんだよ。こんな恐ぇ人に迂闊にイチロー云々何て言えねぇよ)
「今日どうする?」
(どういう聞き方だよ。ノープランでデートするカップルみたいに聞いてんじゃねぇよ)
「あ、その…」
(イチローって言えねぇ…)
「あの、スポーツ刈で」
「長さは? 長め短め?」
「短めで」
(イチローも短めだったからな。うん、これで大丈夫だ)
ザビエルは前掛けをトニ男に掛けると、早速散髪を始めた。
バリカンでウイイイイイイイイイイン!!
(なっ!? 何ですとおおお!!)
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