ギルド『ヘカトンケイル』

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 大きめの円卓と五つの椅子が用意された薄暗い部屋で、他と比べると若干高価そうな椅子に足を組んだ状態で深く腰掛け、肘掛けをトントンと人差し指でリズム良く叩いている男は、ギルド「ヘカトンケイル」のリーダーを務める「グラファイト」だ。  グラファイトの容姿は金髪オールバックに、視界の妨げにならない程度の薄い黒色が入ったサングラス、更には三十路を超えているというのに派手な原色系のロングコート。本人は好んで着用しているが、初対面の相手がグラファイトをリーダーと認識できる確率はかなり低い。 「もう少し待ちましょう。五分『まで』なら私の許容範囲です」  グラファイトの右隣の椅子に座っている女性が、少しもずれていない眼鏡の位置を直しながら言う。彼女の名前は「ダイア」。グラファイトより若干薄い金髪で、髪型は仕事中である今はアップにしており、仕事以外のときはおろしている。更にどんな服やスーツでも着こなせるスタイルとノンフレームの眼鏡が、「デキる女」の雰囲気を醸し出している。その為、グラファイトをリーダーと見抜けなかった者の約九割がダイアをリーダーと勘違いするらしい。 「さっさと始めちゃおうよ。二城君が遅れるのはいつもの事でしょ?」  椅子に腰掛け、地面まで届かない両足を力無く揺らしながら、一人の少女が発言する。彼女の名前は「フラーレン」。こう見えて成人しているらしいが、何故か身長が一向に伸びないので、何も知らない人からは子供と間違えられる事が多々ある。  本人は気付いていないようだが、栗色の髪を左右でくくり、お下げとして両端に垂らす髪型――俗に言う「ツインテール」がフラーレンの幼さをより一層引き立たせている。 「そういう訳にもいきませんよ。彼を含めてここに居る五人しか、『結成当時』のメンバーは居ませんから……」  フラーレンの発言に対し、落ち着いた声でそう反論したのは、ダイヤの隣に座る中年の程よく草臥れた男性で、名は「木倉 源蔵」と言う。彼は見る角度等によって印象が大きく変わるらしく、ナイスミドルに見える時もあれば、ただの草臥れたオッサンに見えることもある。そして、先のリーダー勘違い事件の一割は、奇跡的に彼がリーダーっぽく見える角度から見てしまった者達である。 「確かにそうだが、遅刻してばかりの二城には丁度良い薬かもしれん。これより恒例の会議を――」
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