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服装は地味な茶色コートの下に黒いTシャツとポケット多めのサバイバルベストを着用し、下は丈夫なジーンズ。道具や荷物は肩掛けザックとウエストポーチに分けて入れている。目に見える武器は、腰に提げている一本の剣のみである。
青年は食堂を立ち去り、他の部屋も見て回る。この区域は浅い入り口付近と違い、比較的人の手が入っていない深層区のようだ。酸素の薄さと、ランプの油が残っている現状がそれを物語っている。
そのお陰か、困難と言われる遺跡深部の探索を、明かりの力を活用することで楽に進める。ただ酸素は有限な上に補給できないのだ、急ぐに越したことはない。
見て回る内に気付く。この遺跡は、遺跡と言うよりは生活拠点に近い。言うなれば居住区だ。何故、地下にこんな施設があるのか。
青年の知る歴史に、人類が地下で生活していた記録はない。だとすれば、これは遥か昔に栄えたと言われる、機械文明の残骸なのだろうか?
(いや、まさか。こんなメジャーな遺跡に限ってそれは無い)
ふと浮かんだ突拍子も無い考えを、頭を振って打ち消すと、遺跡の奥へと足を進める。
程なくして足を止める。突如として空間が開け、松明を掲げる青年の前には高さが五メートル、横幅三メートルはありそうな深緑色の巨大な両開きの扉があったのだ。
「これは……力じゃ開きそうに無いな」
そう言いつつも松明を壁に掛け、試しに力一杯押してみるが、案の定びくともしない。引いても駄目で、剣で斬りつけると剣の方が刃こぼれしたので断念。遺跡の仕掛けに良くある合い言葉や呪文も不発に終わる。
手がかりが無いかと周囲を探るが、何もない。わかったのは、この開けた空間の壁に当たる岩肌の部分は磨かれており、この空間は人工的に作られたものだということ位。
「何をやっても駄目か……ん?」
松明の光を反射した何かに気付き、近付いてみる。それは縦に細長い石碑のようなもので、光を反射したのは石碑の中央にはめ込まれている丸い何かだ。その下には所々が掠れた文章のようなものが綴られており、ただならぬ雰囲気を醸し出していた。
(門、守護、ブレア……リオス? 駄目だ、掠れている上に旧字体じゃあ何の事か分からん)
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