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「ねぇねぇ、それ、何書いてたの?」
どうやら気になっていたみたいで高橋さんだけじゃなく、みんなも気にしていたようだった。
「……名前だよ。覚えないと都合が悪いだろ?」
そう言うと彼女は何か言いたげな顔をした。
「…ねぇ、井上君」
「何?」
「その名前が書いてある紙を見てもらって分かるように私たちって名字が被ってるのが多いの。ほら、高橋だって2人いるし、鈴木なんて3人もいるの」
確かに被ってるの多いなぁと思っていたけど……言われて確認してみると…
「…本当だ。……要するに名前で呼んであげた方がいい。と?」
「察しがいいね。井上君!」
「…井上コーチだよ……瑠里」
何かキザなこと言ったなぁ…俺。名前で呼ぶなんて数時間前までは思いもしなかった。
「あっ…はい!!コーチ!」
そう言って、少し恥ずかしそうにはにかむ彼女は可愛かった。
…いや、過去形ではなく現在形の方が適しているだろう。
可愛いのだ…彼女は。
「ほら、バカやってないで…コーチ、私たちは何をすれば…?」
「あぁ、さな…歩実」
慣れないなぁ…まぁ、当たり前か。会ってまだ数分だし…
「何かこしょぐったいなぁ。別にいいんだよ無理して名前で呼ばなくても」
真田さんもどうやら恥ずかしかったみたいで俺の顔を見ないで淡々とそう告げる。
「…じゃあ、慣れるまでは真田って呼ぶよ。…今日は俺がいないと思ってノビノビとやって欲しい。練習もいつも通りのをやって…それでいろいろ分析してみるからさ…」
「うん!慣れたらで良いよ。じゃあ、そういうことだから練習はじめましょう!!」
「はい!!」
…キャプテンは真田さんがやれば良かったのではないだろうか。と思ったのは俺だけじゃないはずだ。
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