*プロローグ

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なんとなく、 朝は占いコーナーを見る。 別に信じてるわけじゃない。 ただの習慣。 コーヒーを片手に、 井上 綾乃(いのうえ あやの)はテレビに視線をやった。 今日の運勢は2位。 ラブ運好調。 ラッキーカラーはネイビー。 ラッキーアイテムはソーイングセット。 「…2位って…」 なんかビミョー。 それに今日は、ラブ運なんてどうでもいいのに。 ごくり、とカップのコーヒーを飲み干した。 そして引き出しから、携帯用の小さなソーイングセットを取り出して、鞄にねじ込む。 「うう。」 ピリッと胃が痛む。 最近胃の調子が良くない。 なのに、お腹にはコーヒーしか入ってない。絶対に良くない。 わかってるんだけどな…。 今日は新商品のプレゼンだ。開発するのにアレヤコレヤと大変だったり、プレゼンの資料と試作を作るのに神経使ってたし。 この痛みはきっとそのせい。 今日のラッキーアイテム。 鞄に忍ばせたソーイングセットを思って、綾乃はふ、と微笑んだ。 毎日の習慣で目にする、朝の情報番組の占いコーナー。 そんなモノを信じちゃうくらい、今日のプレゼンは頑張りたかった。 「…っつ…、いったぁ。」 左手で胃を抑えながら、綾乃はいつもの時間のいつもの車両に乗り込んだ。 「…ぅふわぁ」 ぎゅうぎゅう詰め、 乗車率120%。 毎日乗って慣れてはいるけれど、好きになんてなれない。 押されて、押し返して。 胃が痛いのに朝からキツイよー。
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