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「からまってた」
ふ、と吐息を漏らすように笑いながら、皇は指先でソレを摘まんで目の高さまで持ち上げて見せる。
指先に挟まれたガーネット。
綾乃を抱きしめて首もとに顔を埋めた。
その時にくるくるとウェーブのかかる彼女の髪の毛に引っ掛かったのだろう。
皇の瞳の色と同じそれは、キラキラと琥珀色の光を放っていた。
「つけて」
手のひらに転がされれば『恥ずかしさ』は不思議と感じず、むしろ何の抵抗もなく、今度は綾乃がピアスを指先でつまんで皇の耳元へ近づけた。
そう言えばこのピアス『曰く付き』だって西邑さんが言ってた。
曰く付き?
曰くって……なあに?
でも、特別な事情を聞く権利、今のあたしにあるのかな?
そしてあたしは本当の意味で秘密を知りたいのかな?
西邑さんがあんな思わせぶりな、大きな秘密みたいな言い方するから興味はあるよ?
それは単なる好奇心。
あたしもその込み入った事情を一緒に背負うつもりの『知りたい』なのかは、正直今は良くわからない。
その程度の知りたい気持ちで立ち入っていいことなのかな?
逆に聞いてしまえば大したことじゃないのかも。
『大きな秘密』みたいに、思わせぶりな言い方されたのは西邑さんがあたしをからかっただけとか?
「ね、皇」
ピアスをつけやすいように、少しだけかがむ皇の耳に何とかピアスのピンを押し込む。
指先に触れるのは柔らかい髪の毛。
「……なに?」
「……ピアス」
の曰くってなに?
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