第5章》異界に立つ兵士

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 基地帰還システムというのは、地図上に自分の所属基地までのルートを表示するシステムだ。アストラニアの新兵はちょくちょく世話になるシステムである。しかし、新兵でもなければ、そうそう使う機能でもない。案の定ベクトル隊も忘れていたようだった。 『そうだなぁ…どこ操作すれば良かったっけ?』  暫くの沈黙。どうやらマップを確認しているようだ。 『なぁ、おい』 「やっぱだめだったろ?」  ここは異世界、基地なんて存在しないという確信がクロムにはあったがやはりそうだったかと思うと、落胆を禁じ得ない。 『いや、ガイドラインが表示された。ここから北に十数キロだ?』 「は?マジか!?」  思いもしない答えに驚くクロム。 『これより我々は至急基地へ帰還し、待機する。あんたも後で来いよ』  そう言って装甲車の上を一度旋回すると、ベクトル隊は北へ向けて飛び去った。  クロムも急いで装甲車の運転席に戻り、基地帰還システムを起動させる。空軍の言った通り、北へ向けて点線が続いている。通常なら最短ルートを道路にそって表示するはずだったが、地図情報が無い為直線なのだろう。今のクロムには直線の方が分かり易く、ありがたかった。
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