第6章》ドラゴンナイト

5/19
前へ
/627ページ
次へ
「もうこの国は再起不能だ、放っておけばいいじゃないか…ワイバーンナイトがやられたとなると、新しく教練するのにどれだけかかると…」 「監督官が来ました!」 「ちっ…」  フラスタが口をつぐんだ時、廊下の反対側から赤い鎧を付けた細身の騎士が歩いてきた。神経質そうな顔をした若いその男は、見下すような目でフラスタを見た。 「フラスタ殿、ワイバーンナイトを落としたと思われるカルヴァン王女には、追撃を放ち、別件にて展開していた部隊にも連絡しました。多勢に無勢、手も足も出ますまい」 「…余計な…」  そう言いかけたフラスタを部下が慌てて押さえた。小声でフラスタをたしなめる。 (目付役の前でそんな事を言えば、首が飛びますぞ!堪えてください!)  帝国における地方統治は、大概は目付役である監督官が最高権力者である。皇帝の任命で選ばれる監督官は左遷された貴族よりは地位が高い。帝国領カルヴァンも例外ではなかった。  ――帝国の侵略政策にも陰りが見えているのに、この男はまだそれを維持しようとするのか…  心の中でフラスタは怒りを燃え上がらせた。かさむ戦費と物資の流出で帝国の一般大衆の状況は刻一刻と悪くなっている。民が居なければ国は成り立たない。帝国が滅びへと向かう足音が聞こえてくる気がした。 ・
/627ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8296人が本棚に入れています
本棚に追加