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「テノール!方向も伝えろっつたろ!」
「ひぃい!すいません!」
「ったく!…で!コレを回した方向に曲がる!分かったか?…右方向に火炎弾!」
装甲車は辛くも回避に成功する。
「じゃ、そう言うことで任せた!」
「あ、ちょっと!」
ハンドルをルルゥに任せ、クロムはテノールの横にあるもう一つのハッチから顔を出した。
目の前一杯にドラゴンの鱗が広がっていた。クロムはドラゴンと目が合ってしまう。その存在感とクロムの常識からくる拒否感は彼を一瞬硬直させた。
ドラゴンが大きく口を開けた。口の中が徐々に明るくなり、火炎弾が生成されていく。
「……ぅおっ!!」
我に返ったクロムは慌てて機関銃の銃把を握り、ドラゴンの口内に機関銃弾を叩き込んだ。
ギンギンギンギンギン!と、削岩機のような音が響き発射された弾丸は、丁度ドラゴンの口から発射された火炎弾に吸い込まれていった。
火炎弾が破壊され、轟音をたてて爆発した。ドラゴンは思ってもみない至近からの爆発に驚き、身を捩りながら装甲車から離れていった。ドラゴンの背にしがみつく人間が何か言っていたが、ドラゴンは逃げに入っている。悲鳴をあげてみるみるうちに離れてゆくドラゴンナイト。
それを見届けたクロムは詰めてていた息を一気に吐き出すと、テノールの肩を叩き、車内に戻った。
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