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「分かった!…急げ!もうすぐ敵が来るぞ!」
既に通りの向こうから赤い鎧が波のようにやってきている。帝国兵の雄叫びと足音が地響きのように響き、クロムに届いた。さすがのプレッシャーにクロムは顔をひきつらせながら、無理やり笑ってみせた。
「その件はちょっと考えてある。足止め程度には、ね」
そう言ってクロムは用意しておいた爆薬の起爆スイッチを押した。
ズガガアァン!と、腹に響く音と粉塵と共に、ゆっくりと先程爆薬をセットしたビルが倒れ始める。吹き飛んできた小さなビルの外壁の破片がクロムのヘルメットに小さな音をたてて跳ね返った。
轟音と共にコンクリート片を撒き散らしながら倒れてくるビル。建物は通りを塞ぐように倒れ込み、道を完全に封鎖した。崩れる際に発生した粉塵がクロム達に吹きかかる。
「ぷぇっ…皆、口塞いでろよ!」
そして、粉塵が収まる頃には、クロム達の前に高さが人間の三倍以上の壁が出来上がっていた。爆破が予想以上にうまくいったクロムは小さく拳を握った。
「…これで、暫くは来ないだろ」
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