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しかし、敵の数が多すぎた。徐々に装甲車の方に押しやられるクロム達。
――このままだと、やられる…!
クロムは焦りながらも、打開策を探していた。
――亜人は計算外だった! まさかこんなに身体能力が高いなんて!
しかし、いくら考えても、打開策は出てこなかった。今でさえ苦労しているのに、これの何倍もの兵力が投入されつつある。しかも、敵に回りこまれたら挟み撃ちにあって皆殺しだろう。全滅は時間の問題だった。
「リーナ様は中へ!テノール!護衛を頼む!」
「しかし!」
「バス!あなたはどうするのですか!?」
有無を言わさず2人を装甲車内に押し込むと、バスは振り返ってクロムに叫んだ。
「どうやったらここは閉まる!?」
「扉の中の赤いスイッチだ! …だけど、時間稼ぎにしかならないぞ!」
そう言うクロムには答えず、バスはスイッチを押して後部ドアが閉まり始めたのを確認すると、装甲車に手をかけ、持ち上げ始める。
「う…おぉぉぉぉ!!」
驚くべき事に、徐々に装甲車は持ち上がり、起き上がり始めた。
「なんてパワーだ…」
感嘆の声をあげるクロム。しかし敵も黙って見ていた訳では無かった。倒れたビルの上に陣取った兵士がバスへ向けて弓矢を放ち始めたのだ。
殆どが装甲車に弾かれたり地面に突き立ったりしたが、雨あられと飛んでくる矢は何本もバスの体に突き立った。更に、リザードマンが動けないバスへ殺到する。
「チッ!」
毒づいてリザードマン達に銃撃するクロム。ビルの上の弓兵はルルゥが魔法の炎で焼き尽くす。
それでも、勢いに乗ったリザードマンは、撃たれて絶命しても剣を構えたままの姿勢で突っ込んでゆき、バスの体に剣を突き立てる。
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