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しかし、バスは何とか装甲車を立て直すと、その場に崩れ落ちた。帝国兵達は装甲車に驚いて包囲の輪を広げた。
「バス!」
敵を撃ちながらクロムは駆け寄った。
「…クロム殿…リーナ様を…生き残った者を…頼む…」
「おい!俺はこの世界の事殆ど知らないんだぞ!無理だ!」
「た…のむ…他の若い者を…死なせないで…く…」
最後まで言い切れずバスは息を引き取った。血溜まりがアスファルトの上に広がってゆく。
クロムは歯を食いしばってそれを踏み越え、運転席につく。そして無線を起動した。絶対に無いと分かっていても呼びかけずにはいられなかった。
「誰かいないか!?こちら陸軍のクロム・アルシティ! 現在敵と交戦中! 死者が出ている! 誰か!」
勿論、返事はない。クロムは毒づくと装甲車をゆっくりと後退させる。後部スペースから、リーナが恐る恐る声をかけてきた。
「バスは…どうなりましたか…?」
「戦死しました」
「そんな…」
そこで口を噤んだリーナは、はっとしたように顔を上げた。
「ルルゥは!?ルルゥはどこです!?」
「あっ!」
慌てて探すと、かなり遠く、倒したビルの近くに彼女はいた。
「なんであんなところに!?」
「魔法は余り飛距離がありません!攻撃を当てる為に接近したのでしょう…なんて無茶を…!」
ルルゥはかなり遠くにクロム達の装甲車を見つけると、有らん限りの大声で叫んだ。
「私は大丈夫だから! リーナ様を連れて逃げて!」
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