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「お前らの団長に任されたんだ、死なせるかよ!」
そう叫ぶと、装甲車はエンジンの唸りをあげて敵兵を跳ね飛ばし、ルルゥへ向けて進み始めた。驚いた帝国兵は慌てて装甲車から離れた。三十秒程の間に、何とかルルゥの側に停車する。ルルゥはたった三十秒の間にも攻撃をやり過ごし続けていたらしく、軽鎧の下に着ているローブは所々破れ、血を滲ませていた。
クロムは装甲車の上部ハッチを開け、ルルゥに近づこうとした。それを好機と見たのか、リザードマンの1人が装甲車の上に飛び乗った。
「手柄は俺のモノだ!」
「ちっ!」
蛮刀を振り上げたリザードマンにクロムは、太腿のホルスターから抜いた拳銃を撃ち込み怯んだ隙にルルゥを回収、ハッチを閉めてロックした。途端に、装甲を叩く鈍い金属音が響いた。
「大丈夫か!?大きな怪我は無いな!?」
「何で助けに来たの!?逃げろって言ったじゃない!」
「装甲車の能力なら大丈夫だ!逃げ切れる!」
ギアをバックに入れて、車両を勢いよく後退させる。後方に立っていた帝国兵をひき倒しながら、包囲の輪から脱出した。
その勢いで車両を方向転換させると、クロムはギアを再度切り替え、アクセルを踏み込んだ。
地面に散乱するアスファルト片や地面の苔を吹き飛ばしつつ、装甲車は廃墟の外へと猛然と走り出した。
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