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装甲車を軽く点検したクロムが、バケツを手にテノールの隣にしゃがむ。
「あぁ…俺達は、生きてる」
そう言ってクロムは川からバケツで水を汲んだ。ついでに顔に付いた血も洗い流す。
「………」
暫くの沈黙。
川のせせらぎがいやに大きく聞こえる。
「…ちょっと、周囲を偵察してきます…」
そう言って立ち上がろうとしたテノールの腕を、クロムは掴んだ。
「待て」
「何ですか?」
「これを持って行け」
腰のホルスターから拳銃を抜いて、初弾を装填すると、テノールに手渡した。
「撃つ時はここを下にずらして、穴が開いてる方を敵に向けて、ここを指で引け」
実際に安全装置を外し、近くにあった石を狙い、引金を引いて見せた。
乾いた発砲音とともに、河原の石が砕け散る。排莢された空薬莢は、ちゃぽんと川に落ちた。
「あと11発撃てる。撃ち尽くしたらそれを使うことを考えるな」
「は…はい…使い方は何となく分かりましたが、何故これを?」
「発砲音は結構響く。敵の襲来を俺達に早めに知らせる筈だ」
「な…なるほど、では、行ってきます」
そう言って、テノールは鎧を鳴らしながら近くの森に駆けて行った。
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