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それを見届けてから、クロムはバケツの水を装甲車にかけてゆく。そして、ヘッドライトと窓の防弾ガラスに付いた血を拭いた。
リーナとルルゥは黙ったままだ。仲間を目の前で失ったのがよほどショックだったのだろう。
この光景をクロムは見たことがあった。国連の要請でとある国の内戦を沈静化させる為に派兵された際、戦死者が出たときのことだ。皆が悲観的になり、次々と仲間が死んでいった。
――この空気で戦闘になると、また誰かがやられてしまうかも知れない。
クロムはみたびダメ元で装甲車の無線を起動する。
「こちら陸軍のクロム・アルシティ少尉。誰か応答せよ、繰り返す、応答せよ……はぁ…出るわけないか……」
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