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やはり、無線からの応答は無い。無線機から手を離すと、クロムは装甲車のシートにずるずると座り込んだ。
誰からの救援も期待できない。物資も残り少ない。情報も無い。これから、どうすればいいと言うのだろう。
――とりあえず、情報収集か…
装甲車から降りたクロムはリーナ達の横に腰を下ろした。依然として黙ったままのリーナに声をかける。
「リーナ…さん?」
「リーナでいいですよ、クロムさん」
そう言って力無く微笑むリーナ。
いや、呼び捨てはやっぱどうなんだろう、ちょくちょく呼び捨てにしていた気もするけど…と、考えつつ、クロムは少し前から気になっていた事を聞いた。
「敵の攻撃が執拗では無いですか?例えあなたが王族の一行でも…ここまでされる理由は?」
実際、クロムはリーナ達が王族だと言う話を本当に信じた訳では無かった。
突拍子も無い話だったので、信じきれずにいるのだ。一般人なら、なおのことここまで追われる理由が分からない。クロムが見た限り、相当な人数が襲いかかってきていた。ドラゴンを使った敵の空輸用の箱には、相当な数の兵士が満載されていた。
敵がそこまでする理由を、目の前の女性に見いだせずにいた。
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