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数時間後、暫く道を走り続けた装甲車は時々空ぶかしのようなエンジン音を響かせながら疾駆する。運転席ではクロムがハンドルを握っていた。燃料計を見たクロムは軽く唸る。
「っと…ガソリン残量がやばいか…?」
すでにかなりの燃料を消費していたうえに、先刻横転した時からエンジンの調子が悪い。このままでは基地に帰りつくまえにエンジンが止まる可能性がある。
「テノール、ルルゥ、近くにさっきの廃墟みたいなのは無いか?」
「え?…この辺には無いと思うわ」
「自分も記憶に無いです」
「はぁ…困ったな…」
近くにクロムの世界の廃墟があれば給油や修理ができたかもしれなかったが、無いならどうしようもなかった。
「途中から徒歩とか面倒だなぁ…」
「え…どこかやばいの?」
そう聞いてくるルルゥにクロムは諦めたように答えた。
「装甲車が壊れて途中から徒歩で移動するかも知れない」
「うぇえ…勘弁してよ…」
苦笑しながら前方を見たクロムは、我が目を疑った。
かなり遠くに背の高い建造物群が見えたのだ。慌てルルゥに確認をとる。
「この辺に本当に廃墟は無いんだな!?」
「う…うん、そのはずよ」
再び前方を見つめるクロム。遠目に見てもクロムの世界の都市に見える。やっと装甲車を修理できるかと、クロムは安堵した。しかし、彼は遠いがゆえに気付けなかった。都市が、細い黒煙をあげていることに。
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