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「これでよし、と」
そう満足げに呟き、前方の遺跡群へと竜を駆った。遺跡群上空にずんぐりとしたドラゴンの姿が見える。帝国の竜送兵だ。
「おいおい、さっさと地上に降りるなりして隠れてろよ…丸見えじゃねえか…」
そう独り言をいうと、シュライトは竜送兵に近づいていった。どうやら兵士は既に地上に降ろしたらしく、ドラゴンはなにも抱えていなかった。
「おい、どうした?」
そうシュライトが声をかけると竜送兵は慌てたように「あれを!」と叫び地上を指差した。その先を見ると、黒いうねりがそこにあった。
「な、なんだ…?」
シュライトが話に聞いていた、『黒い奴ら』だ。その黒い川の中洲のように帝国兵の鎧の赤。彼らは必死に抵抗していたが次々と討たれてゆき、その姿は黒に飲み込まれた。
「な…んだ…?」
そうして驚いているうちに黒い波は一瞬にして消え去る。後には主の居ない鎧と帝国兵の死体が散乱するのみであった。
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