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次の瞬間、装甲車に金属同士がぶつかるような鈍い音が響き、車体後部のドアがひしゃげた。凄まじい衝撃に、装甲車はバランスを失いかけ蛇行する。
「………!?」
バランスをたてなおし、破壊された後部ドアを一瞬見たクロムは、すぐに前を向くとアクセルを最大まで踏み込んだ。壊れかけのエンジンが唸りをあげ、スピードをあげはじめる。クロムは冷や汗を垂らしながら叫ぶ。
「何だアレ!?どういう原理!?」
「私にもよく分かりません!『勇者』の何らかの力だと思われます!」
テノールがそう言う。横に来たリーナがそれについて補足した。
「『勇者』は神から力を与えられた武具を所持していることが多いです!あの方が持っている剣もその一種かと!」
ルルゥを除く全員が車両の前部スペースに集まっていた。
少なくとも、後部ドアの近くよりは安心できるからだろう。ルルゥはひしゃげた後部ドアの隙間から後方へ攻撃魔法を放っていた。
「ファイアボール!」
ルルゥから放たれた魔法の火球を、追跡者は軽々と剣で両断した。ルルゥは絶句したのちにクロムに叫んだ。
「あいつ、剣で魔法を切ってる!強力な魔法剣を持っているのかも!」
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