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剣の切っ先が、自分に向けて降りてくる。視界にはファンタジー映画から抜け出て来たような男。男の背後には、青い空。大陽の光を受けて、男の黒く輝く剣は、とても妖しく、そして美しく見えた。
――あれが、俺を殺すのか?こんな、訳の分からない世界の、訳の分からない土地で?
クロムは手を動かそうとしたが、ぴくりとしか動かなかった。
――こんなことになるなんて…思いもしなかった。銃や兵器を過信した結果だとすれば、なんと無様なことだ。
剣先がゆっくり、ゆっくりと降りてくる。
――いや、俺は心の奥底で異世界にいるという事実を拒んでいたんじゃないか?実際、今の状況は夢でも見ているようだ…痛みは間違いなくこれが現実だってことを知らせているのに…
剣先があと数センチまで迫る。視界が混ざり合い、剣先もぼやけて見えなくなる。
――こんなとこで…死ぬわけには…
あと、数ミリ。
――……クソ……
そして、クロムの意識は途切れた。
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