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まぶたを開くと、世界に光が満ちた。柔らかな陽光。澄んだ空気に草の香り。広い草原に、彼女は倒れていた。
「う…」
ゆっくりと起き上がる女性は、アキ・メイプルフィールドだった。
――どこ、ここ…
暫く目の前の光景に呆然とする。自分が居たのは確かに都市の中心部だったはずだ。なのに何故、こんな平原に転がっていたのか。
遠くには山の稜線が見える。そよ風が吹いて、平原の草がさわさわと揺れた。
その風に乗って、覚えのある臭いが届いた。ガソリンの臭い。かすかにエンジン音も聞こえる。
――敵!?
咄嗟にアキは草むらに伏せた。草むらを探ると、近くにアサルトライフルが落ちていた。拾いあげて弾数を確認する。
残弾が充分なのを確認して、本体に叩き込んだ。初弾を装填、安全装置を解除すると、音の発生している方向に銃口を向けた。エンジン音はどんどん近づいてくる。
姿はまだ見えない。しかし、アキの指は震えた。呼吸も荒くなり、照準が上下する。
そして、エンジン音とタイヤが地面を踏みしめる音。アキの緊張は頂点に達した、その時。
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