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このままでは横転するかも知れない。そう考えたアキはジープのキーを何度も回した。最初はエンジンの不発音が聞こえていたが、4度回してようやく復活した。同時にブレーキを踏み込む。
耳障りな音をたててジープは丘を下りきった所で停車した。アキはそのままアクセルを踏み込み、再度丘を登り始める。
「びっくりした…」
「生きた心地がしなかったっす」
「流石は年代物、エンストも当たり前か」
アキ以外の3人はそう言って笑いあった。アキとしてはまたいつエンストするか気が気では無かったが…
がたがたと車体を揺らしながら着々と丘をジープは登ってゆく。そして、ついに頂上に到着した。アキはサイドブレーキをかけ、後輪に手近にあった石を添えてジープがまた丘を滑り落ち無いようにすると、エンジンを切り、改めて周囲を見た。
「おぉ…すげぇ…」
そうフレグが呟くだけで、他はただひたすらに息を呑むばかりだった。
そこは、視界一面に広がる、緑溢れる草原だった。遠くには背の高い山々の連なりが見え、眼下に広がる草原の隅には深い森が広がっている。人工物の一切無い、雄大な大自然だった。
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