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一瞬、妙なモノが見えた。
「…えっ?」
アキは一旦双眼鏡を離すと、目をごしごしとこすり、もう一回双眼鏡をのぞく。
そこには、赤い鎧を着た大集団が歩いていた。徐々にこちらに接近してくる。慌ててアキは味方に呼びかけた。
「ねぇ皆!あれを見て!」
「どうした?」
レント達がアキの指さす方向を双眼鏡で確認する。目で見たことが信じられないのか、呆けたような声でデールが呟いた。
「…なんです、あのコスプレ集団は?」
レントが緊張を孕んだ声でデールへ言う。
「コスプレって雰囲気じゃないな…本物のように見えるな」
アキは双眼鏡で、鎧の集団の装備を確認してゆく。徒歩で行進している者は革鎧の軽装で槍を持っていて、腰に短刀と幾つかの小袋を提げている。それが数え切れない程に集まって隊列を組み、槍衾を形成している。
騎馬に乗った者は煌びやかな装飾を施した重そうな鎧を着込み、何事かを周りの人間に指示している。指揮官クラスであることが窺われた。
そんな集団が列を揃えてぞろぞろと歩いて来るさまに、アキは圧迫感を感じた。アキはジープから支給品のデジタルカメラを持ってくると、望遠を最大にしてシャッターをきる。画素が荒くなるが仕方がない。まずはキャンプに報告する事が先決だ。
「デール、この写真をキャンプまで送って、対応を聞いて!」
そう言ってアキはカメラから記録カードを抜くと、デールに手渡した。緊張した面持ちでデールはそれを受け取り、手持ちのコンピューターの通信機能でキャンプへ画像を送信し始める。アキは再び双眼鏡を覗き、うなった。
「一体どうなってるの…!?」
その瞬間、アキ達から少し離れた地面が轟音と共に吹き飛んだ。
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