第8章》騎士団迎撃

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 帝国第7騎士団の団長は、轟音とともに土のえぐれた遥か遠くの丘を見て、舌打ちした。 「ちっ、私も腕がなまったものだな…」  団長は、少し前から丘の上に陣取る数人に気付いていた。カルヴァンの偵察隊とあたりをつけた彼は、それを魔法で吹き飛ばそうとしたのだった。団長は優秀な魔導士である。威力が高いほど、射程が長くなるのが帝国式攻撃魔術の特徴だった。  カルヴァン公国の地方領主の中で、帝国の降伏勧告に従わない者を撃滅する任務を彼は受けていた。  ――しかし、遠目に見て、奇妙な服装をしていた。敵の偵察隊だとすれば、本隊はあの丘の裏か。偵察隊を仕留め損なったが、こちらは1万だ。カルヴァンにこれを越える兵力は残っていない。押しつぶせる。  彼はそう考えて、馬首を丘の方へ巡らせる。近くにいた護衛に、そちらの方へ進路を変更する事を伝えると、護衛は騎士団の先頭集団へ伝えるために馬を走らせていった。  団長はロングソードを音高く抜き放ち、高々と味方を鼓舞した。 「帝国に敵は無し、帝国に壁は無し!あの丘の向こうに敵は居るぞ!」  周囲の兵士達から鬨の声があがる。その声は地を揺らさんとばかりに草原に響いた。 「帝国に勝利を!!」  そうして第7騎士団は、丘へ向けて進撃を開始した。 ・
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