第8章》騎士団迎撃

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 その頃、アストラニア軍のキャンプでは戦闘後の後始末をしていた。二回に渡る弓矢の一斉射は、防御陣地周辺の地面を矢で埋め尽くし、矢だるまになった兵士を数名生産した。 「お…終わった……?」  気が抜けたのか、デールはそう呻くと地面にへたり込んだ。フレグは地面に刺さった矢を引き抜いて、キャンプまでの短い道を確保しようと躍起になっていた。まるで庭の草むしりでもしているのかと勘違いするくらい、周囲には弓矢が突き立っていた。 「だー!!鬱陶しいっすマジ!これじゃ歩けねっす!」 そんな光景を見ていたレントは、改めて自分達の命を守った陣地を見やった。  U字型に積まれた土嚢の上にブロックを置き、その上に更に木の板を乗せて、木の板と土嚢の間から銃撃する、簡易のトーチカをレント達は作ったのだ。木の板の上には更に土嚢を平積みにしており、矢が木の板を貫通しないように工夫もしてある。  ほぼ真上から来る矢を防ぐことができるこの簡易トーチカを見て、他の陣地の兵士も真似をした。お陰で、二回目の一斉射の時は、被害はほぼゼロだった。トーチカの屋根に積んである土嚢には、余す所なく矢が突き立っていて、至る所から中身の砂が漏れ出している。 「我ながらよくできたもんだ…」  自身が死んだ兵士から武器をかき集める時に手付いた血を、レントは野戦服のズボンで出来る限り拭き取ると、他の者を手伝うために駆け出した。  暫くの間、フレグと一緒に地面から矢をむしっていると、防御陣地よりも更に先から、戦車回収車が何かを引きずって帰って来た。  帝国軍の団長に履帯を破壊されて走行不能になった戦車だった。戦車のハッチからはばつの悪そうな表情の戦車兵が顔を覗かせている。
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