第8章》騎士団迎撃

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 野戦病院のテントは、アキを届けに来た時には考えられない程の人数が詰まっていた。野戦病院の本来の役目を果たしているのだ。  テントに入りきらない人間は、衛生兵に外で治療を受けている。更に、テントの奥の方には、黒い寝袋のようなものが、ずらっと並んでいた。死体袋。戦死者の遺体が入っている袋だ。レントは目をすがめた。昔から人死はよく見たが、何度見てもきついものがある。そちらを余り見ないようにしながら、レントは野戦病院のテントに入った。近くにいた軍医を捕まえて、アキの居場所を聞き出そうとする。 「アキ・メイプルフィールド軍曹は居るか?」  呼び止められた軍医の白衣には、大量の血液が付着していた。兵士の呻いているテント内をざっと見渡して、軍医は首を捻った。 「あれ?いないなぁ…いつ出て行ったかな?自部隊の配置、教えました?」 「一応は、まぁ」 「じゃあもう持ち場に戻ってるかもですね」  軍医はそう言って、他の患者を診るために走り去っていった。レントはため息をついた。 「副隊長にも困ったもんだな…」 ・
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