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鉄条網を鋸の歯のように配置した防衛線には、死臭に満ちていた。鉄条網の前には、鎧を着て、剣や槍を持った兵士達が累々と倒れている。帝国軍だ。鉄条網の手前辺りで皆なぎ倒され、山のように兵士が積もっていた。その高さはそれだけで鉄条網が乗り越えられそうな程だ。
「こりゃあ…どうなってんだ…?」
塹壕を掘り、その中から機関銃で鉄条網に取り付く敵兵を掃射していたアストラニア兵の伍長は、穴から出てきて唖然とした。
側防火器として配置された機関銃は、鉄条網を破ろうとする敵だけを撃てればよかったので、防御を固め、銃口だけが地面からでているように砂で埋めてしまう。そのため、表の光景を見ていなかったのだ。
「どうしたんですか?」
もう一人の機銃手の二等兵が顔を出す。伍長と同じ光景を見て目を見張った。
「……う…ぇっ…」
二等兵が、あまりの光景にうめく。そしてすぐに口を押さえて、どこかに行ってしまった。おそらく吐きに行ったのだろう。伍長も吐きそうな気分だった。
同時に、敵の正体は何なのかが気になった。剣や槍を使うなんて、現代戦の常識に照らし合わせてあまりにも奇妙だ。そう、まるで異世界のような…
「一体、こいつらはなんなんだ…?」
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