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少し古い型のナイフだ。目の前に立っている兵士を刺し殺した時のナイフ。
「……っ!?」
入口に立つ兵士の腕がのろのろと上がる。その手には拳銃が握られていた。耳がごうごうと鳴る。冷や汗が滝のように流れる。手が動かない。足が動かない。顔を凝視しても何故かぼんやりとして分からない。
「………!!」
のろのろと上がった銃口が、クロムの心臓をぴったりと狙った。兵士の口が動く。
「…クロム殿…」
その声を聞いた時、クロムははっきりと兵士の顔を理解できた。
「あんたは…バス…」
バス。カルヴァンの騎士団長の顔だった。クロムは驚愕で声がかすれる。
「………!?」
「……何故……私の亡骸をあそこに捨てていったのか…」
「それは…あの時は、仕方無く…」
「問答…無用…」
バスはそう呻くと、拳銃の引き金を引いた。
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