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「う…」
――夢、か…
クロムの視界は暗い。暫く、自分がまぶたを開く気になれず、ぼんやりとしていた。
耳には、エンジン音とガタガタという音が聞こえる。背中には、少し固い感触。車のシートだろうか。頭には、柔らかい何か。枕、だろうか?
――ん?車?
――俺は、勇者とかいう化け物と戦ってた筈じゃ…
「目をさましましたか?」
「つっ!?」
上から聞こえる抑揚の少ない女性の声に、クロムは慌てて上半身を起こそうとした。途端、クロムの体を痛みがはしった。
「ぐおぉ……っ!」
胸や腕など、全身に激痛がはしった。腕もやられていたらしく、腕をあげるのもつらかった。
「肋骨を骨折していますし、至る所に打撲があります。安静にすることを推奨します」
やはり抑揚の無い女性の声と共に、優しく寝かされる。クロムは声の主の方を見た。
かなり広い車内、クロムの頭上には感情の窺えない顔の女性が、クロムの顔を見おろしていた。
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