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クロムは慌てて起きあがり、全身を貫く痛みに呻き、悶えた。しかし、なんとか背もたれに背を預けると、改めてシグマの方を向いた。慌てたあまり、少し声がうわずった。
「いや、問題ありだろ!びっくりしたわっ!」
シグマは無表情で少し首を傾げる。
「男性はこれを女性にされると安心できると記憶しています」
「場合にもよるだろ!」
「人間とは難しいものですね」
いや、お前も人間だろと言うツッコミを飲み込みつつ、クロムは状況を確認しようとシグマに質問した。
「…で、俺はなんでここにいるんだ?一緒にいた奴らは?」
シグマは頷いた。
「了解です。状況説明を開始します」
そう言うと、抑揚の少ない声で話し始めた。
「少尉の同行者2名は、別の車両に収容されています。命に別状は無いようです」
「そうか、よかった…って、2人?」
怪訝な顔で聞き返すクロムに、シグマは頷いた。
「はい。敵は銀髪の女性を抱えて逃走しました」
クロムは顔を覆って上を向く。月夜に輝く銀の髪が脳裏に蘇る。
「リーナは連れてかれたか!くそっ!」
今まで守り続けていた人物が連れ去られた。そのこともクロムにショックを与えた。
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