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カルヴァン城内
「陛下、もうこの広間も保ちませぬ」
満身創痍の騎士がそう言った。壁に取り付けられた大松の光で、広間は橙に照らされている。
「うむ…」
カルヴァン王は立ち上がり、銀を用いた精緻なレリーフの入った鞘から少し大振りの、これもまた精緻な細工の施された剣を抜き出し、一人の騎士の名を呼んだ。
「バス騎士団長」
「は」
呼ばれて出てきたのは、身の丈2メートルはあろうかという巨漢だった。眉は太く、ごつごつとした顔の作りはまるで岩のようだ。普段は穏やかな彼の表情はしかし、今は厳しくしかめられていた。
「これを、私の娘に」
「な……王……貴方は死なれるおつもりですか!?」
「聖剣は王位継承者の証でもある。持ってゆけ。…なに、私が若い頃に使っていたバスタードソードがあるさ。手入れは忘れていないしな」
「…しかし!」
「…行け。これは王としての最後の命令だ」
「……」
「娘を、護ってやってくれ」
「……」
「娘は、17になったばかりだ…若い命を無駄にしたくない」
「…………………分かりました、拝命します…」
「頼んだぞ」
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