第1章》カルヴァン

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 騎士団長が一歩引いた所で、王は聞いた。 「誰か、娘の護衛をやってくれないか。バスだけでは中々大変だろう」 「「「……………」」」  最期までここで戦う。全員が目で、それを語っていた。 「……そうか…」  そこで王は少し目を細めると、騎士達に宣告した。 「では、私が決めよう。…娘の護衛として、バス・ガストン騎士団長、テノール・タクト騎士補、ルルゥ・ビブル王室魔術師の三名はここからリーナを連れて去れ」 「…!」  名を呼ばれて身を固くする騎士達。彼らは最期まで残るつもりであった。 「異論は認めない。…王家のみが知る外への逃げ道がある。リーナならそれを知っている。私達が時間を稼ぐ、その間に逃げろ。…以上だ、行け。」  バスは何かを言いたげに王を見たが、諦めたように首を小さく横に振ると鎧の胸当てに自らの拳を叩きつけ、敬礼した。 「…分かりました。神の祝福があらんことを…!…行くぞ」 「……はい」  騎士達が部屋の奥にある扉から出て行ったのを確認して、王は壁にかけてあった古びたバスタードソードを手に取り、構えた。残った騎士達も各々の得物を構える。  大広間の扉の蝶番が嫌な音をたて、閂に亀裂が入った。もうすぐ突破される。  カルヴァン王は広間が振動する程の声量で吠えた。まるで彼が若かった頃、『カルヴァンの武勇王』と呼ばれていた頃のように。 「…行くぞ!皆の者おぉ!!」 ・
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