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地図を見ながらテノールが言う。
「ここからだと近くにワールシュタットの森があります。」
テノールが指さした先をリーナは見た。夕闇に照らされ黒々とした森がそこには広がっている。バスが首肯した。
「あの森に隠れながら進んだほうが、敵の目を欺けます。魔物が出たという報告は聞いていないので安全に通過できるでしょう」
リーナは眼前に広がる森を見て、不安を感じずにはいられなかった。うなじのあたりがちりちりするような、そんな感覚。
「その道しかないのでしょうが…大丈夫でしょうか…?」
「今更ですよ、リーナ様!最悪、私の幻影魔術で姿を隠しましょう!なんだかんだ攻撃魔法も使えますし!」
そう言ってぐっと握り拳を作ってみせるルルゥに微笑むと、リーナは
騎首をワールシュタットの森へと向けた。
「…そうですね。では皆さん、行きましょう。公国の再生の為に!…そして…父上の敵討ちの為に!」
『はい!』
リーナがそう締めくくり、一行を乗せた馬は森へ進み始めた。
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