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ワールシュタットの森
「リーナ様、帝国兵をまけたようですな。」
一行の後ろを見張りながら、バスが言った。
「警戒は怠らないで下さいね。いつ発見されるとも知れません。」
自身も森の茂みを見つめ敵を探すリーナ。
「あと『様』はやめて下さい。私は今、ただの『リーナ』なのです。」
「しかし、私も呼び捨てで貴女を呼ぶのに慣れていないので…はは…」
「う……ちゃんと慣れて下さいね…」
バスは内心、無理だと思いつつも首肯した。森に入った時から地味に索敵をしていたテノールが声を出す。
「ん…なんだ?」
森の奥底の暗闇の中から、ゆっくりとした動作で人影が現れた。暗くて相手の格好がよく分からない。怪訝そうに剣を抜きかけていたテノールが、その人影の正体に気付いて叫んだ。
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