第3章》覚醒

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 その兵士は帝国兵の鎧を着ていた。しかし、その鎧姿には本物と根本的に違う所があった。金具の全てに至るまで黒いのだ。  通常の帝国兵は赤を基調とした鎧を付けている。さらに恐ろしいことに、顔がないように見える。周囲の薄暗さもあるが、兜の中に顔を見つけることが出来ない。  それが沢山、ゆらり、ゆらりと揺れながらも確実にこちらに近づいてくる。彼らの動きからは、生気が感じられなかった。しかし、その手に握られているロングソードからは言い知れぬ殺気がたちのぼっている。  黒い帝国兵は背後の森の暗闇から続々と湧いてくるようにも見えた。余りに奇怪な敵に驚きが隠せない一行。テノールが半歩程後ずさった。 「団長…こいつら…なんなんですか!?人間じゃ…」 「だ…誰だろうとこちらを狙うなら倒すまでだ!」 バスが少し焦って言う。 「ルルゥ、攻撃魔法を…」  そう言って後ろを振り返った時、頼みの魔術師は居なかった。 「……あいつ、逃げた!?」  ワールシュタットの森には黒い帝国兵の登場に合わせたかのように、濃い霧が立ち込め始めた。 ・
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