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クロムはほとほと困り果てていた。クロムの知っている言葉は全て出したので、これ以上何も言えなかったのだ。ガスマスクの下で嫌な汗が伝うが、拭うことなどできるはずも無く、クロムは必死に軽いパニックに陥った脳を回転させた。
(やべー…言葉通じないよ…どうする…!?)
解決策を考えるクロムの脳裏に昔、雑談をしていた時のフレグの言葉が蘇る。確か、軍の食堂でテレビを眺めていて、手話に関するドキュメンタリー番組を見た時だった。
『手話っつーのは万国共通なんすよ、覚えといて損はないっすね』
(……そうか、手話…いや待て、俺手話できないじゃん!覚えときゃよかった…あ、身振り!身振りで伝えれば…)
なぜ今まで気付かなかったのだろうと自分自身に憤りつつ身振り手振りで言葉を伝えようとする。まずはここから離れることが先決だ。
(ここは危険だから装甲車まで誘導してやろう。)
少なくとも流れ弾位は防げるし、何が起こったのか知っているかもしれない。
そう考えたクロムは付いて来いと手で招くようなジェスチャーをした。
さすがに手招きは理解したらしく、不思議な中世の人間のような格好をした女性は立ち上がった。
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