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謎の男は、一応敵では無いようだ。言葉が通じないと知ると身振り手振りで言いたいことを伝えようとしている。その動きはなんとなくユーモラスだった。
――助けてくれるのかな?
言いたいことは何となく分かった。助けてくれるとは言いたいようだ。どうせならリーナ姫も助けて欲しかったのだが…伝える方法が何か無いものだろうか?そう考えるうちに男は付いて来いと歩き出した。
「あ、ちょっと待って!」
もしかすると協力を仰げるかも知れない。さっきの敵がリーナ達の元に現れていたら、こいつは絶対に役にたつだろう。
ルルゥはふらつきながら立ち上がると、男の後を追った。暫く濃霧の中を歩くが、男は迷うことなく歩いてゆく。
実際のところクロムは装甲車の発信機の方向に歩いているだけなのだが、ルルゥはそう見えた。
やがて、男は立ち止まる。男の背後から前を見たルルゥは驚いた。
「……なに、これ?」
目の前に、鋼鉄で全身を覆ったような荷車があったのだ。それは森の中で異様な存在感を放っている。男はそれの中に乗れと手で促し、扉を開いて乗り込んだ。
怪しい臭いがしないでもないが、今更断っても仕方がないと腹を決めて、ルルゥも荷車に乗り込んだ。
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