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「聖夜祭、いよいよ明日だね」
少し楽しそうにアキが言うと、クロムは苦々しい顔をして呻く。
「でもなぁ、あまり好きな行事でもないんだよなぁ…」
「あ、仕事があるから?」
「去年はそれで休みが無くなったじゃんよ?」
「命令なら野暮用でも動かないといけないしね…まぁ、それが公務員でしょ」
「大体ウチはなんで共産圏の軍事パレードみたいなマネをしてるんだ?戦車なんか見たってなんにも楽しく無いだろうに」
「一般市民は普段あまり見られない物だから、出し物の一環になるんでしょ」
「俺らは毎日見てるからなぁ…大したもんじゃないんだがな」
「ものは馴れだよね…入ってきてすぐのクロって、結構はしゃいでたよね」
「あの頃は俺も若かったなぁ…」
「まだ23でしょうに」
そう言って微笑むとアキはクロムと同じように空を見上げる。遠くで戦闘機達が模擬戦をやっていた。
複雑な軌跡を描く飛行機雲が白いリボンのように見え、青空によく映えた。ジェットエンジンの排気音が周囲に響いている。
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