第3章》覚醒

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 クロムは装甲車に女性を乗せると開きっぱなしだった後部の大型ドアを閉じた。女性は内部の明るさと、閉まる時のブザーとモーター音に驚いたようだが、次第に落ち着きを取り戻し、車内の備品を珍しそうに見回している。 (装甲車の中はあまり一般人の目に触れないから、珍しいんだろうなぁ…)  そんな事を考えながら、大分消耗しているように見える女性を眺め、ポケットの中にあったチョコバーの存在を思い出した。取り出してみたところ、幸い砕けてはいないようだった。 「ほら、甘い物がもし好きならこれでも食うか?」  言葉が通じないと分かれば丁寧な言葉遣いをする必要はないだろう。チョコバーの袋を開けて渡してやった所、最初は何なのか分からないようだったが、食物であることを食べる仕草で教えてやると臭いを暫くすんすんとかいだ後、ガツガツ食べ始めた。相当腹が減っていたのだろう。 (今更ながら気付いたけど、こいつが平気ってことは、あの白いのってただの霧だったのか…?)  ガスマスクの不必要性に気付いたクロムは、ガスマスクを外し、フィルター越しでは無い空気を吸い込んだ。 ・
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