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装甲に木々がたたきつけられ、車内に鈍い音を響かせている。
――へこまない…よな?多分…
今までやったことも無いことだったため、クロムは冷や汗が止まらなかった。ひっくり返りでもしたらコトだ。
暫くその状態が続き、そして、木々の隙間から突然抜け出た装甲車の前には、やや開けた土地があり、今まさに2人の騎士を踏み潰さんとする黒い岩の巨人の姿があった。
「なん!?」
クロムは慌ててブレーキを踏むが、いかんせん近すぎた。同乗者のルルゥに叫ぶ。
「掴まれ!ぶつか…」
クロムがそう言い終わらない内に、6輪装甲車の鼻先が黒ゴーレムにぶち当たる。金属と岩が擦れあう耳障りな音を響かせ、片足立ちというバランスの悪い姿勢だったゴーレムが激しく土を撒き散らしながら横転した。装甲車もバランスを崩しかけ、片輪が少し浮き上がった。
「クソが!」
ハンドルを回し、その場で装甲車を90度近く方向転換しながら制御を取り戻す。ずしんと、音をたてて装甲車が立て直したとき、クロムは奇跡的にも後部ドアを騎士達に向ける形で停車していた。
「…あらら?何こいつら?」
運転席を敵に、ひいては森の外へと続く道に向けて。
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