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リーナ達は追い詰められていた。黒い帝国兵の次はゴーレムやワイバーンナイトが襲いかかってきたのだ。それはまるで、濃い霧の中から無限に湧き出してくるかのようだった。
奮戦むなしく一行は崖の壁面にあった洞窟まで後退させられていく。その洞窟も、逃げ込んで見たところ祠のような場所で、それほど深くも無く、リーナ達は進退窮まってしまった。
「くそ、こいつらどんどん湧いてくるぞ!」
「こいつらは死を恐れていないのか!?」
「クソ、クソっ!!」
体のあちこちにできた傷から血を流しながら、バスとテノールは戦い続ける。既に彼らの周囲には中身の無くなった鎧が幾つも散乱していた。
彼らが守る洞窟の奥には、聖剣であるレイピアを手に提げたリーナがいた。
――もはやここまで…
自分は恐らくここで死ぬ。理解はしていても、おとなしく殺されることは思考に無かった。
――父の復讐を果たすまで、こんな所で死ねない…死ねないのに…!
悔しさに涙が出た。表では、バス達が敵を罵る声と、剣戟の音が聞こえる。地響きは敵のゴーレムか、さもなくばバス達にたたき落とされた敵のワイバーンナイトだろう。
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