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「まずあのクロムという方は何者です?旅人では無いでしょう?」
とリーナは尋ねる。ルルゥは暫く考えるそぶりを見せ、顔をひきつらせた。
「………そう言えば、何してる人かは聞いていないような…」
焦ったようにテノールが叫ぶ。
「や…あいつが帝国のスパイだったらどうします!?」
しかし、その声は爆発音にかき消され、クロムに届くことは無かった。響き続ける爆発音に辟易しながらバスは言う。
「…取り敢えずワールシュタットの森から脱出する事が先決では無いでしょうか?彼に頼んで森の外まで送って貰いましょう。駄目元で」
「もし帝国のスパイだったら…」
「彼が敵の間諜だった、その時は…」
手に持つ戦斧を握り締め、バスは囁く。ルルゥとリーナは息を呑んだ。
「…彼は1人、此方は3人。いつでもやれる」
そんな不穏な事を背後で話されているとも知らないクロムは、唖然としながらも遠隔操作で機銃を撃ち続ける。蜂の巣にされたワイバーンナイトが錐揉みしながら地面に墜落し、黒煙となって掻き消えた。日は沈んでいるようで、霧であることも手伝って視界はすこぶる悪い。
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