第0章》プロローグ

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「今、私は怖い。実戦でまた、本当に敵が撃てるのか、分からない。」 アキは左右に頭を振った。 「確かに、あの時は撃てた。だけど、今はどうだか…あの時は、無我夢中だった。…ねぇ、本当に私達は敵を殺せるかな?」  アキとクロムは入隊時、とある紛争地に派遣され、過酷な戦闘をくぐり抜けて来た。クロムの脳裏に様々な光景が鮮明に蘇る。 飛び交う銃弾。 爆発で吹き飛び、死んでいった友軍。 接近戦でクロムがナイフを突き立てた敵兵の表情。 悲鳴。 呻き声。  一瞬浮かんだそれらを振り払い、クロムは口を笑う形にすると、アキの背中を軽く叩いた。 「今はそんな時代じゃない。世界はここ数年で変わった。今は平和の時代、今のこの国に戦争が起こる要素は全く無いんだ。俺達が生きてる間この国が戦争に首を突っ込むこともしないだろう。さすがにあの時の件で懲りたはずだ」 「うん…」  納得しにくそうな表情のアキを尻目に、自身の部下達を呼び集めるクロム。 「さて、そろそろ時間か…おーし!お前ら!再開!訓練再開!」 遠くのほうのフレグが腕を振りながら叫ぶ。 「まだ一時間経ってないっす隊長ぉ!」 「馬鹿野郎、一時間も休んだら体が鈍るだろうが!さっさと集合っ!」 .
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