第5章》異界に立つ兵士

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「まことに、申し訳ない!貴殿が敵でないかどうか、確かめさせて貰ったのだ!」  そう言って、バスは頭を下げた。既に構えられていた戦斧は地面に投げ出されている。 「……はい?」  急な態度の変化にクロムは戸惑いながらも拘束しているルルゥを見た。じたばたともがきながらルルゥは弁明した。 「ごめん!あなたの実力と正体を見極める為にやったの…痛い痛い!とりあえず離して!」 「申し訳ありません、バスがあなたの正体と実力を見極めたいとどうしても言うものですから…怪我を負わせるまでやるとは思いませんでした。お怪我は、大丈夫でしょうか?」  クロムの首から流れる少量の血を心配そうに見ながら、リーナは言った。 「…つまり、今のは全部演技だったと?」  ルルゥから手を離しながらクロムはそう呻いた。バスが厳しい顔で頷く。 「うむ、リーナ姫は我々が何としても守らねばならぬ方、万一にも敵を仲間に引き入れるわけにはいかないからな」 「………仲間?」  クロムはそう言って首を傾けた。クロムの締め上げから解放されたルルゥが、自身の手首をさすりながら言う。 「カルヴァン公国の現在に関係があるの」
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