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バスは自身の斧を手入れしながらテノールをフォローした。
「テノールは地理に詳しいですからな、道案内はこの者に任せておけばよいでしょう」
「はぁ…」
「案内は任せて下さい、クロムさん」
「はぁ、まぁ、よろしく」
クロムは取り敢えず片手を差し出した。握手だ。しかし、テノールは怪訝な顔をした。
「なんです、その手は?」
「あれ?もしかして握手って習慣、この世界に無いのか?友好を示す行為だよ、これは。俺の世界じゃこれがスタンダードな挨拶なんだ。互いの利き手を差し出して、それを握り合う」
「…ああ!武器を持ってない事をこれはアピールしてるんですね、なる程!我々は胸に握り拳を当てる『騎士礼』しか知らないもので…すいません」
得心したテノールはクロムと握手を交わした。そして、すぐさま彼等は少ない荷物をまとめ始める。朝食はほのぼのとしていたが、リーナ達は追われる身である。クロムは装甲車を軽く点検して、走行に支障が無いかを調べる。昨日かなり乱暴に運転したため、足まわりが心配になったのだ。機銃の遠隔操作システムが壊れて操作を受け付けなくなっていた、小さく舌打ちをする。
たきぎも上から土をかけて消火した。水でやると派手に煙があがるためだ。過去にクロムが派遣された内戦で、反政府ゲリラから学んだ事を忠実に実行する。その時、ゴロロ…という、遠くから轟く雷のような音が響いてきた。
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