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「雷の音が近づいてきます…」
怯えた顔でリーナが言った。ルルゥはそっとリーナの背中を撫でた。
「リーナ様、雷苦手ですものね…」
呑気なもんだと12.7ミリ重機関銃を撃ち続けながらクロムは思った。ダンダンダン、ダンダンダンと間隔を開けて撃つことで牽制しているが、機関銃の仰角が取れないので真上に来られてはおしまいだ。弾数も怪しいが撃ち続けるしかない。そもそも車載の機関銃は対地用だ。対空射撃能力は捨てている。
「やっぱり対空射撃なんてやるもんじゃないな…クソ!イライラする!」
空になった薬莢が装甲車の車体を跳ね、草生い茂る地面にポトポトと落ちていった。敵は悠々と旋回を始めた。弾切れでも待っているかのようだ。
航空支援があれば楽勝なのに、とクロムが歯噛みをしたその時、装甲車の無線から空電音が鳴った。驚いたものの、条件反射でヘッドセットから聞こえる声に耳を澄ませた。片手で機関銃を射撃するのは忘れない。
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