第1章

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「この革命が―」 まるで子守唄のような、世界の過去の出来事を聞きながら窓の外を眺める。 いつもなら騒がしいはずの教室も、この授業になれば一気に静まり返った。 …どうして世界史というものは眠くなるのだろうか。 僕は眠い目をなんとか開け、必死に寝ないようにだけはしていた。 「…敦也、敦也」 横から名前を呼ばれ、外から目を離す。 隣をみると、今にも眠りそうな瞳をこちらに向ける人物がいた。 「何?」 「何みてんの?」 「外」 「いや、そうじゃなくて」 話しかけてきた人物――押切和哉が苦笑いを浮かべている。 「外の何を見てんの?」 「あぁ、そういうこと。あれだよ、風景見てる」 軽く窓の外を指差すと、和哉も体を乗りだし窓の外を見ようとした。 「景色ねぇ…」 いきなりにやにやと笑い、僕が指差したところより下を指差す。 「正確には、グラウンド見てんじゃないの?」 グラウンド? なんの話だろうと指差された方向を見ると、校庭で騒ぐ女子が見えてきた。 「…あのさ」 「ん?」 「僕、そんなの興味ないから」 真顔でそう告げると、和哉は何を思ったのか「照れんなよ」と軽く肩を叩いてきた。 「あれは7組かな」 授業中だというのに、和哉は身を乗りだし窓の外を眺める。 「…うん、絶対7組だ」 「よくわかるな」 「わかるよ。だって彩ちゃんいるし」 「彩ちゃん…?」 聞き覚えのない名前に、僕は首をかしげた。 …
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